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栄村の人々 スチール編

島田司さん 小赤沢地区 山ぶどうバッグ作り

17年ほど前

秋山木工生産組合の島田さんは、もともと木のテーブルや木鉢などの木工品を生産する職人だった。

いまから17年ほど前、「かごバッグ」に興味を持ち、独学で制作を試みた。

その材料として、島田さんは秋山郷に自生する山ぶどうのツルに着目した。

島田司さん-写真2

秋山郷に自生する「山ぶどう」

ぶどうのツルを採取するのは夏前の6月から7月にかけて。

この時期が地面からたくさんの水分を吸い梅雨の湿度により樹皮を剥がしやすい。

山ぶどうのツルは太すぎても細すぎてもだめ、直径5センチぐらいのものを選んで採る。やぶをかき分けて熊も出るような山奥まで丸一日かかる大変な苦労である。

島田司さん-写真3

材料づくりからの手仕事

バサバサの樹皮とその下の皮を剥がして、カッターなどを使いなるべく長く樹皮を剥ぎ取ることから作業は始まる。

1日水にさらし、日陰干しで約3ヶ月の間乾燥させてようやく編む材料となる。

編む前には、ツルを一定の切り幅と厚さに整える。

湿らせながら隙間が出来ないように詰めながら編んでいく。

島田司さん-写真4

美しい艶と色合いを引き出す

編み始めると簡単なデザインで2日から3日、複雑なものだと5日は優にかかる。

完成前にツルの毛羽を火であぶり削っていたが、数年前に霧吹きで湿らせて金属たわしでこすったところいい色になることを見つけた。

厳しい環境の中で育った山ぶどうのツルはとても丈夫で、成分が酸化し赤茶色に変色する。何とも言えない艶である。

使い始めは堅めだが使うほどに馴染んで、色合いも深みが出る。

この頃は都会のデパートでも島田さんの作品を見かける。

秋山郷の自然と島田さんの手仕事が生んだ世界にひとつの逸品「山ぶどうバッグ」として。

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